今回は「肥満」と口の中の細菌との関係についてです。その5。
2022/11/14
予防歯科
身体が肥満だと、そうでない人より歯周病が進行し、歯を支える顎の骨が減る危険な状態になるので用心が必要です。
肥満の人の脂肪組織中のある物質が歯槽骨を吸収する事が報告されています。またラットの実験によると、肥満のラットは歯周組織の遺伝子発現が変化し、歯の周囲の歯槽骨が減り易い結果が出ました。そのうえ肥満は血圧を上昇させ、高脂血症や心臓病などに繋がる事はご存じと思いますが、糖尿病も併発するので注意が必要です。もう一つつけ加えると、肥満は大腸の腸内細菌にも影響するようです。安定した腸内細菌叢を変えてしまい、歯周炎があると歯を支える骨がやはり減少するようです。ですから歯科の立場から見ても肥満は見過すことが出来ません。そもそも肥満も糖尿病も基礎疾患です。ここから色々な病気を併発するので早めの対応が宜しいと思います。
それでは歯科の立場から言える肥満予防法、肥満撃退法についてです。その方法は極めて簡単です。それはただ「何回も良く咬む事」です。しかしほとんどの人は無意識で噛んでいるので食べ物を数回しか咬んでいません。数回咬んですぐに飲み込んでしまうので、まるで際限なく食べ物を口の中に投げ入れているような感じです。もっと徹底的に噛みこみ噛みつぶす感じでいると、自分の体にふさわしい食事量を自然が決めてくれます。少ない量で体が満腹感を感じてくれます。そこが自分の体に適正な食事の量ですから、咀嚼の回数に注目したいところです。
咀嚼回数が少ないと食べ過ぎます。満腹中枢がなかなか納得しないので、食べ過ぎても体の満腹センサーが働きません。ですから体が必要以上に太るのです。これは人間本来の姿ではありません。
霊長類からヒトへ進化した時は食べ物が少なかったと言われています。ですから少ない食事量から最大のエネルギーを引き出すように体は設計されて来ました。若し必要以上に食べ物を摂取し続けると、体は非常に無理して対応しなければなりません。それが肥満や糖尿病等などです。古から継承され続けてきた基本設計図を超えてはならないのです。超えたら体は悲鳴を上げています。その悲鳴を聞く耳を持たないと病気になります。
毎日、食べ物を沢山咬んでいると間違いなく、精神もしっかりしてきます。体も安定します。味も良く解ります。食費もかさばりません。良く咬めば良いことだらけです。それに反し、ちょっとしか咬まないのは大自然の恵みを軽く見ている証拠です。心して恵みを受けるべきです。そうすれば肥満も歯周病も予防出来ます。
唯ここで問題があります。それは咀嚼運動は無意識が動かしているのです。だから良く噛む事が大切だと分かっていてもそのうち忘れてしまいがちです。ですからこれははっきりと意識して取り組まなければなりません。取り組んで、無意識で咀嚼しても何時も沢山咬んでいる癖を身に付けてしまう事です。私はその癖がついています。食事の時は何をしているのでしょう。私は食事をしながら健康法を実施しているのです。
よく噛む事は、殊に小さい子には必要です。何故ならよく噛めば顎が発達して永久歯が綺麗に生えそろうからです。良く咬まないと顎が発育不良になるので、歯並びも乱れます。乱れた歯並びは細菌が貯留しやすいので、虫歯や歯周病になり易くなるので、全身の健康にも響いてきます。それを防ぐには矯正の専門医に歯並びを治してもらわねばなりません。治療費もかかります。何でもよく噛んで顎を正常発育させ、其のうえ大地の恵みを体で覚え、良く味を噛みしめる事が肝要だと思います。
成城学園前 予防歯科 鈴木歯科医院