医療法人社団碧山堂鈴木歯科医院

予防歯科の項目ですが、今まで「呼吸法」や「正しい姿勢」などについてお話ししました。今回はその3、「口腔清掃と全身の健康との関連について」です。その3

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予防歯科の項目ですが、今回は「口腔清掃と全身の健康との関連について」です。その3.

予防歯科の項目ですが、今回はその3、「口腔清掃」と「誤嚥性肺炎・糖尿病」との関連についてです。

2022/11/10

 口腔清掃と全身の健康の関係についてのお話しです。

今まで述べた事に引き続いて、歯科医師が扱う「口腔清掃」について、日常の臨床経験から感ずることを述べます。一昔前までは考えられない事でしたが、今は高齢社会ですからどなたでも90歳前後まで長生きする可能性があります。長寿になった時によく噛める歯が或る程度あるかどうかでその人の健康にかなり影響する事は良く知られている所です。これについても一般にはまだあまり知られていない事があり、これも極めて重要なのでいずれお話ししますが、今回は「口の中の清掃と全身との関連」を先に致します。「口の中」とは「体の中」そのものであり、口の中は胃腸等の消化器系や肺などの呼吸器系に直接繋がっている入口です。

 歯科医院では主に虫歯や歯周病などを扱いますが、ほぼこれは口の中にいる細菌が原因の病気です。

ですから口腔内細菌を少なくすればこれらの疾患を予防出来ます。しかしこの細菌は口の中だけでなく、全身の疾患にも大きく影響しているようです。これが肺炎に及ぶ事から始めましょう。

 今の日本で、細菌感染症による死亡の第一位は肺炎です。しかもその肺炎の原因の最大のリスクはいま話題になっている誤嚥性肺炎です。唾液や食物等は食道を通して胃腸に運ばれるはずですが、誤って気道に入ってしまい、肺に達して肺炎を起こす事があります。そうならない様にしたいところですが、日常的に嚥下している唾液が綺麗か、或いは多量の口腔細菌が混じっているかで結果は大きく異なります。細菌が少ない唾液をたとえ誤嚥しても軽い肺炎で済むかもしれません。しかし歯周病菌や虫歯菌が放置されていると、これが口の中の虫歯や歯周病だけに止まらず、誤嚥による重篤な感染性肺炎を起こして危険な状態になる可能性が大いにあります。高齢者に誤嚥性肺炎が増えているようですから若し毎日口腔清掃を的確に行っていれば大事に至らずに済むはずなのでこの予防法が大切になります。夜間の睡眠中でも唾液の嚥下を無意識で行っています。その時の嚥下の機能が低下していると、唾液が胃腸に向かわずに肺に運ばれてしまい肺炎を起こしますから、基本として心掛けるべきは口の中が細菌の巣窟になっていない事です。

 誤嚥性肺炎を完全に防ぐことは今のところ難しいようですが、あえて言えば、予防法としては以前お話しした「呼吸法」を取り入れる事も大変に有効だと思います。「無意識」で浅い呼吸を繰り返していれば呼吸に関連する器官が段々弱くなります。これに対して「意識」して呼吸法を励行していると呼吸器官も健全に機能し続け、誤嚥が少なくなるはずです。

またもう一つの予防は「無意識」で食事をするのではなく、「意識」してはっきりと咀嚼運動を何回も繰り返してから「意識」して嚥下する事です。ですから昼間は意識して咀嚼・嚥下運動をする事である程度は誤嚥を防げるかもしれません。またこのように呼吸器官、消化器官を日常鍛えていれば、夜間の誤嚥の予防にも繋がるかもしれません。また譬え夜間の誤嚥があっても、唾液さえ綺麗なら、その影響は少なくなると思われます。

 以上は口の中の細菌が直接器官に影響を与えるダイレクトタイプですが、もう一つ、血液を介して口腔内の細菌が様々な全身の疾患を起こす間接タイプがあります。これも大変に深刻な問題ですが、口腔清掃さえきちっと出来ていれば予防する事が出来ます。 間接タイプの中には沢山の良く知られた疾患があります。 

 その中で先ず第一に注目したいのが糖尿病です。これは他の全身疾患をも惹起する基礎疾患ですから、予防や早めの対処が是非とも必要になります。歯の周りに歯周病菌が溜まると炎症性物質が産生され、これが血液中に入ります。するとこれがインシュリンの機能を低下させます。一般に欧米人に比べて日本人はそもそもインシュリンの生産量が低いと言われています。それなのにその働きが弱くなれば弱り目に祟り目です。ですから日本人は糖尿病になり易いと言われます。

 糖尿病が進むとどうなるかご存知かと思いますが、様々な血管が脆くなり、或いは動脈硬化症を起こして周辺組織の病的変性を起こします。

 これが細い血管に発症し、眼に来ると網膜症になり、知らないうちに失明につながる事もあります。網膜の血管に異変が起こるからで、失明の第二の原因は糖尿病からのようですから注意が必要です。

細い血管は腎臓に密集しているので糖尿病性腎症にもなります。腎不全や透析に繋がるので大変です。

 糖尿病が大きな血管に発症すると、脳梗塞や心臓疾患や足の壊疽になる危険性が有ります。かつてショパンコンクールで若年ながら優勝したピアニスト、ブーニンは糖尿病から足の一部を切断しました。その様な実例が沢山ありますから用心に越した事はありません。全身に張り巡らされて栄養や酸素を送っている血管に障害を起こす糖尿病は恐ろしい病気です。この糖尿病になる原因は色々ありますが、その中で歯周病などの口腔内細菌も絡んでいます。糖尿病と歯周病の両者の関係ですが、糖尿病が悪化すると歯周病も増悪し、反対に歯周病が治ると糖尿病も軽減されるデータが明らかになってきました。ですから高齢化社会の中で、是非とも口の中はいつも綺麗にブラッシングして健康な生活に繋がるようにしましょう。

 次回はその他の全身疾患との関係に移ります。

                                   成城学園前 予防歯科 鈴木歯科医院

 

 

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